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今回は、2025年6月25~27日に東京ビックサイトで開催された「ワークプレイス改革EXPO」に行ってきました。実際に会場を歩きながら、各社が提案する未来の「働く場」に触れる中で、今、オフィスに求められる役割が大きく変わっていることを実感しました。
本レポートでは、特に印象に残った4社の展示と提案をもとに、これからのワークプレイスのあり方について考察していきます。
1.ワークプレイス改革EXPOとは?
「ワークプレイス改革EXPO」は、『総務・人事・経理 Week』の構成展の1つとして開催されており、オフィスの構築・改善・最適化に関する最新の製品やサービスが一堂に会する展示会です。また情報交換や商談の場であると同時に、これからの働く環境や未来の働き方を考えるきっかけを提供する場でもあります。
出展分野は以下の6つに分類され、多様な角度からの「働き方改革」の提案が行われていました。
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・ワークプレイス構築
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・オフィスソリューション
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・リモートオフィス
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・オフィス活用
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・ワークスタイルサーベイ
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・働き方コンサルティング
2.印象に残った4社の展示と提案
【1.株式会社イトーキ様】
―アルゴリズムで最適化する会議室予約システム
独自のアルゴリズムを用いたポイント制の会議予約システムが印象的でした。これにより、ユーザーの予約行動を自然に望ましい方向へと誘導し、会議室の利用効率を最大化することが可能となります。
予約方法には「おまかせ予約」と「こだわり予約」の2種類があり、前者では希望条件(時間・人数など)を選ぶだけで、システムが最適な会議室を自動的に提案・割り当てを行ってくれます。後者では、利用者自身が細かな条件で会議室を選択可能であり、柔軟性と効率性の両立が図られていました。
このシステムでは、ユーザーに定期的に補充される保有ポイントを使い予約を行います。また会議室の需要と使用状況をリアルタイムで分析し、状況に応じてポイントを使用し“価格”を調整する機能も備えています。
会議室をポイント予約制にすることで、需要の多い時間は価格が高くなっている為、需要が少ない時間帯へと選択を促すことができます。結果的に、快適な空間利用が従業員のストレス軽減やエンゲージメント向上にもつながる可能性を感じました。
【2.コクヨ株式会社様】
―「オフィスを動かす」ことで実現する柔軟性と主体性
“動くオフィス”というコンセプトはとても共感できるものでした。従来のオフィスは一度設計されると、レイアウトを変更するのが難しく、固定的な空間という印象がありました。しかしコクヨ株式会社様の“動くオフィス”は、そうしたイメージをやわらかく更新し、空間のあり方に新しい可能性を示していると感じました。
特に印象的だったのは、仕事の内容やチーム構成、集中したい時・話し合いたい時など、日々変化するニーズに応じて、レイアウトを自分たちで柔軟に変えられる点です。空間を「働き方に合わせて動かす」という発想は、これからの働き方に必要な柔軟性を自然に取り入れるアプローチだと思います。
また、家具が軽量で動かしやすく、従業員一人ひとりが自分で空間を整えられるという点も、「自分ごと化された職場づくり」として非常に価値があると感じました。その結果として、「オフィスに行きたくなる」「ここが自分の居場所だ」と思えるようになり、エンゲージメントやモチベーションの向上にもつながるのではないでしょうか。
「決められた場所で働く」のではなく、「自分に合った場所を自分でつくる」という視点は、これからのオフィスづくりにおいて重要な考え方だと思います。コクヨ株式会社様の“動くオフィス”は、働き方の選択肢を広げ、変化にしなやかに対応できる空間づくりを実現していると感じました。

【3.株式会社オリバー様】
―空間の快適性を極める家具設計
印象的だったのはエアコン付きソファの個室ブースと5角形型のワークデスク、そして高性能を備えた集中ブースです。
まず、エアコン付きソファの個室ブースは、これまでの「ブース=暑くて長時間使えない」といった固定観念を覆すものでした。空調機能がソファに組み込まれているという発想はとてもユニークで、省スペースかつ効率的な設計に驚かされました。また、風が直接当たらず、空気が壁面を伝ってやわらかく循環する構造は、身体的なストレスを最小限に抑え、集中力を持続させる効果があります。

次に、5角形型のデスクでは、視線が交わらないように設計されており、「個」と「チーム」の両方の働き方に対応できる点が印象的でした。オフィスや教育現場において、個人作業と共同作業の切り替えやすさは非常に重要であり、必要な時にはチームでコミュニケーションを取りながら働くことができます。

さらに、高性能を備えた集中ブースにおいては、音の設計や自動点灯するライトなど、細部まで利用者目線で作られていることが伝わってきました。音が上から降ってくるように聞こえる構造により、席に座っている状態のみ音が聞こえ、外部には音が漏れづらくなっている仕組みになっていた点は、仕事に没頭できる「自分だけの空間」が提供されています。こうした細部の快適さが、従業員一人ひとりの働く意欲やエンゲージメント向上に繋がるのだと思います。

【4.株式会社サンゲツ様】
―自然とのつながりがもたらす心のゆとり
2つの展示が印象的で、窓のようなモニター画面と、特にIoT/AIを活用したテーブル型の野菜栽培プランターは、新しい提案でした。
窓のようなモニターは、まるで外の風景が見えるかのような視覚的開放感を演出するものでした。実際の窓ではなく、映像で外の景色を取り込むことで、内(ウチ)と外(ソト)のつながりを感じさせる工夫がされています。薄型設計になっているので、取り付けても空間を邪魔せず、圧迫感がありません。季節によって映る画面を変えることで四季を感じられます。この演出によって、オフィス内でも自然とのつながりを感じられ、従業員のストレス軽減やリラックス効果が期待できると感じました。

また、IoTとAIを活用したテーブル型の野菜栽培プランターも非常に興味深いものでした。センサーやアプリと連携することで、水やりのタイミングや植物の状態などが確認でき、誰でも簡単に野菜を育てることができます。オフィスにいながら「育てる楽しさ」や「自然とのふれあい」を実現しています。
さらに、部署の垣根を越えてチームをつくり、チーム単位で育てるなどの施策を取り入れれば、野菜を育てるという共通の目的が、従業員同士の自然なコミュニケーションのきっかけとなり、チームワークの向上やウェルビーイングの推進にもつながると感じました。働く場所だけではなく、心地よく過ごす場所の提案はとても共感できるものでした。
3.共通するテーマとトレンドの考察
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●柔軟性
どの企業も「固定的な空間からの脱却」を強く意識しており、従業員がその場に応じて空間を動かしたり選んだりできるような柔軟性を重視していました。空間に対する選択肢の拡大が、働く主体性を引き出していました。
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●快適さ
物理的な温度・音・視線といったストレス要因を取り除く工夫、さらには自然や光を感じられるような仕掛けなど、身体的・心理的快適性の追求をどの企業でも行っているように感じました。
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●データ活用とDX(空間の可視化・最適化)
センサーやAIによる空間データの取得と分析が進み、空間自体が学習し、最適化されていく動きが見られました。可視化と動的な運用によって、働き方と空間が連動し、柔軟性と効率性を両立させる方向に進んでいます。
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●エンゲージメント向上
自ら空間を整える行為や、野菜を育てるような自然との接点が、従業員の主体性や「自分ごと化」を促していました。特に株式会社サンゲツ様のように「育てる」体験を共有することで生まれるコミュニケーションやチームワークの形成は、今後のオフィスにおいて注目すべき要素です。オフィスは、ただ働く場所ではなく「居たくなる」「関わりたくなる」場へと進化していると実感しました。
4.まとめ
今回の展示会を通じて、オフィスは単なる「働く場所」から、「関わりたくなる空間」「自分ごととして育てる場」へと進化していることを実感しました。各社の提案に共通していたのは、柔軟性・快適性・主体性を支える仕組みと、自然やデータ活用を融合させた人間中心の空間設計でした。空間をどう整えるかが、働き方だけではなく、組織文化や人の意欲にまで影響を与える時代です。
今後の空間づくりは、機能性だけでなく従業員の「感情」や「繋がり」をどう育てるかが求められていると感じました。
今後もこのような活動をレポートで報告し、共有していければと考えております。次回のレポートもお楽しみに。