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今回は、2025年6月3日~5日に東京ビッグサイトで開催された『オルガテック東京 2025』に行ってきました。
オフィス家具・空間デザインのトレンドの展示が行われ、今後の業界動向を探る良い機会となりました。本記事では、会場で感じた働く環境のトレンド5つと会場の様子をレポートします。
■ オルガテック東京とは?
「オルガテック」は、ドイツ・ケルンで70年以上の歴史を持つ、世界最大級のオフィス・商空間デザインの国際展示会です。この歴史のあるオルガテックの日本版・アジア版としてスタートしたのが『オルガテック東京』です。
2022年に東京で初開催され、以降は毎年開催されており、日本国内だけでなくアジア全体のマーケットを見据えた“働く空間の未来”を体感できる展示会です。
■オルガテック東京 2025 開催概要
コンセプト
「オルガテック東京 2025」のコンセプトは2024年に引き続き「SHIFT DESIGN」でした。
最新のオフィス家具や空間設計、素材、テキスタイルなど、働く環境を支える製品・サービスが集まり、生産性と創造性を高める未来のワークスペースを体感することができます。
展示製品はオフィス家具をはじめ、最新のオフィス関連設備や機器、また音響・照明システム、フローリング材などの生産性と創造性を高める製品・空間の展示。さらに、A/V技術やプレゼンテーションシステム、ITソフトウェア、各種サービスまでオフィスに関するあらゆるニーズに応えられるサービスの展示など多岐にわたります。
■会場で感じた働く環境5つのトレンド
1.丸を取り入れた柔らかいデザイン
会場では、個室ブースやミーティングスペース、ファミレスブース、オフィスデスクなど、さまざまな家具において角が丸く仕上げられたデザインが多く見受けられました。こうしたデザインは、空間全体に柔らかく親しみやすい印象を与えるとともに、使用者に対して心理的な安全性やリラックス感をもたらす効果を狙っているものと感じられました。

その中でもアイリスチトセ株式会社様による“enKAK(エンカク)”という製品コレクションが印象的でした。展示されていたテーブルやチェアは、角のない滑らかなフォルムが特徴で、空間にやさしい雰囲気を生み出していました。従来の「働く場」としてのオフィス空間にとらわれず、人が自然体で過ごせる場所としての設計思想が感じられ、非常に共感を覚えました。

また、複数のアイテムを自由に組み合わせることができる設計となっており、空間全体の統一感や柔軟なレイアウトを実現できる点も魅力的です。オフィスに求められる多様な機能や働き方に、しなやかに対応できる提案として、今後さらに注目されるのではないかと感じました。
2.個室ブースの機能向上
個室ブースに関しては、従来のような「こもって集中する」ためだけの用途にとどまらず、複数人でのミーティング対応や、可動式によるレイアウト変更のしやすさといった観点から、空間の柔軟性が大きく向上している印象を受けました。実際、天井のないタイプや、組み立て・移動が容易な構造のブースも多く見られ、利用目的やシーンに応じた多様な選択肢が広がっているように感じます。
プラス株式会社様のブースにおける展示では、従来のような固定された壁で区切るのではなく、取り外し可能なカーテンを活用してエリアをゆるやかに仕切るという提案がなされていました。これにより、開放感を保ちつつ、必要に応じて空間の独立性を確保できるという、非常に現代的なワークスタイルに対応した設計が実現されています。

また、この仕切りは、可動式のパネルなどのオプションと組み合わせることで、独立性のある個室ブースとしての機能も持たせることが可能で、利用シーンに応じて柔軟に空間を変化させられる点が特徴的でした。
さらに、仮眠スペースやリフレッシュエリアといった業務以外の目的での利用にも対応できる設計が随所に見られ、「働く場」としてのオフィスが、より多様なニーズに応える方向へ進化していることを強く実感しました。
3.屋外でも働けるオフィス家具の提案
「どこでも働ける」時代を反映し、屋外環境に対応したオフィス家具が多く展示されていました。会場では、屋外用のチェアやテーブルをはじめ、可動式のワークユニットや、アウトドアスペースでの使用を前提とした什器など、働く場所やスタイルの多様化を支える製品が数多く紹介されていました。
特に印象的だったのは、イナバインターナショナル株式会社様による “ガレージを活用した屋外オフィス”の提案です。

これまで物置や倉庫としてのイメージが強かったガレージ空間を、機能的かつ快適なワークスペースへと再構築し、屋外でありながらも集中して作業できる環境として提示していました。
断熱性や通気性などガレージ本来の構造的特長を活かしつつ、自社オフィスやレンタルオフィスとしての使い勝手を追求したその空間は、高架下の空いたスペースなど郊外での新しい働き方を想像させる実用的なアプローチでした。
またこれまで、ホテルやリゾート施設といったホスピタリティ分野において、屋外家具を中心とした製品を展開していていたニチエス株式会社様。今回はそのノウハウを活かし、新たに屋外ワークやオープンスペース向けの家具をオフィス用途として提案している点が印象的でした。
アウトドアに強みを持つ企業ならではの視点から、従来のオフィス家具メーカーとは異なる切り口で、開放的かつ柔軟な働き方を支える空間づくりを提案しており、今後のワークプレイス設計における一つの方向性を示しているように感じました。

4.癒し効果のあるカラー使い
くすみカラーを基調としたインテリアやウッド調の家具が多く配置され、会場全体に落ち着きのある、やわらかな雰囲気が広がっていました。色彩や素材の選定においてもナチュラルなトーンが意識されており、空間に自然な温もりと親しみやすさが感じられたのが印象的です。
こうした空間づくりは、単に視覚的な美しさを演出するだけでなく、働く人の感情や心理面に配慮した「癒し効果」やリラクゼーションの要素が積極的に取り入れられているように感じられました。実際、木の質感や淡いトーンの色使いは、心理的にも安心感を与え、来場者が自然と視覚的にリラックスできるような空気を生み出していました。
その中でも、QUON様のブースでは、自然素材とやさしい色彩を組み合わせたソファやチェアが展示されており、空間に溶け込むような柔らかさと、居心地の良い距離感を感じさせるデザインが印象的でした。特に、丸みを帯びたフォルムや、布地の質感にこだわった張地は、視覚的・触覚的にも落ち着きを与える工夫がなされており、働く場における“癒しの居場所”としての新たな提案が感じられました。
従来の無機質で効率を最優先にしたオフィスとは一線を画し、心地よさや感情面での快適さを重視した空間設計が丁寧に展開されていました。

5.スチール製の椅子
スチール素材を活かした家具が多く展示されており、その軽やかで直線的な造形が印象的でした。
株式会社イトーキ様の展示では、スチール素材をベースとしながらも、軽やかさと親しみやすさを両立させたプロダクトが目を引きました。
例えば、ブース内で紹介されていたワークステーションは、スチール特有の細くすっきりとしたフレーム構造に、落ち着いたカラーリングの組み合わせ。視覚的な圧迫感が少なく、周囲との調和もとれており、現代のオープンな空間にフィットする提案として非常に印象的でした。

直線的なスチール構造でありながらも、柔らかさや落ち着きを感じられるデザインが多く、視覚的な心地よさにも配慮されていました。
■まとめ
今回の展示会では、魅力的な製品が数多く並び、オフィスという枠にとらわれない多様な働き方を実感できました。働く場所を自由に選択できる柔軟な空間づくりが進んでおり、温かみや柔らかさを感じさせるデザインが多く見られたのが印象的です。
初めて展示会に行きましたが、働く空間というより、リラックスしながら仕事ができる空間づくりをしているブースが多く、自分らしく仕事ができる空間の需要が高まっているのではないかなと考えました。
コンセプトである「SHIFT DESIGN」にあるよう、まさに、変化する時代に合わせて「シフト」していくデザインの最前線を感じられる、未来の働き方に向けた新たな提案が詰まった展示会でした。
今後もこのような活動をレポートで報告し、共有していければと考えております。次回のレポートもお楽しみに。