
ここまで、オフィス移転における「物件選定のミスマッチ」とは何か、そして、オフィス移転の成功には「物件選定」と「内装計画」をセットで考えるべき理由を解説してきました。物件選定のミスマッチを防ぐためには、物件選定と内装計画をセットで考え、専門家のサポートを受けながら、計画的に進めることが重要です。しかし、物件選びの際に何をチェックすればいいのか、具体的にイメージできていない方も多いのではないでしょうか。
ここでは、物件選定の段階で特に注意すべき3つのポイントに焦点を当て、解説します。これらのポイントを事前に確認することで、入居後のミスマッチを防ぎ、スムーズなオフィス移転を実現しましょう。
レイアウトの自由度
オフィス移転の物件選定において、まず重視すべきは「レイアウトの自由度」です。理想のオフィスを実現するためには、物件の間取りや構造が、希望するレイアウトに合致しているかを確認する必要があります。
具体的には、以下の点を確認しましょう。
●間取りの制約
柱や梁の位置、空調設備や防災設備の配置によって、自由にレイアウトを組めない場合があります。特に、オープンスペースの設置や、会議室やミーティングルームを作ることを検討している場合は、広い空間を確保できるか、柔軟に間仕切りを設置できるかなどを確認することが重要です。
●天井の高さ
天井が低いと、開放感が損なわれたり、照明や空調の設置に制約が生じたりする可能性があります。
●床の形状
床の形状、特に、OAフロアの有無についても確認しておきましょう。OAフロアがあれば、配線などを床下に収納でき、レイアウトの自由度を高めることができます。
●窓の位置や大きさ
窓からの採光は、従業員のモチベーションや生産性に影響を与えるだけでなく、レイアウトにも影響を与えます。窓の位置によっては、デスクの配置が制限されたり、間仕切りを設置しにくかったりする場合があります。
このように、レイアウトの自由度を確認することは、理想のオフィスを実現するために非常に重要です。物件選定の段階で、間取り図や内覧を通じて、希望するレイアウトが実現可能かどうかを慎重に検討しましょう。
配線・インフラ環境
オフィス移転の物件選定において、見落としがちなのが「配線・インフラ環境」です。入居後に「電源が足りない」「ネットワーク環境が整っていない」といった問題が発覚すると、追加の改修工事が必要になり、時間とコストのロスにつながります。
具体的には、以下の点を確認しましょう。
●電源容量
OA機器やサーバーなど、オフィスで使用する電気機器の総消費電力を把握し、物件の電源容量が十分かどうかを確認します。特に、サーバー室や会議室など、電力消費量の多いスペースについては、余裕を持った電源容量を確保する必要があります。
●コンセントの位置・数
デスク配置やOA機器の配置を考慮し、必要な場所に十分な数のコンセントがあるか確認しましょう。
●空調設備
オフィス全体の空調の数や場所、個別の温度調節が可能かどうかを確認します。特に、サーバー室など、温度管理が重要なスペースについては、専用の空調設備が必要になる場合があります。
●その他インフラ
給排水設備、ガス設備、防災設備など、業種や業務内容に応じて必要なインフラ環境を確認しましょう。
これらの要素を事前に確認することで、入居後の追加工事を最小限に抑え、スムーズなオフィス環境の構築に繋がります。専門家の意見を聞きながら、自社の業務内容や将来的な拡張計画に合わせて、最適な配線・インフラ環境を備えた物件を選びましょう。
施工ルール・管理規約
オフィス移転の物件選定において、最後に確認すべき重要なポイントは「施工ルール・管理規約」です。物件ごとに改装可能な範囲やルールが異なるため、事前に確認を怠ると、理想のオフィスデザインが実現できないだけでなく、予期せぬトラブルに繋がる可能性もあります。
具体的には、以下の点を確認しましょう。
●改装可能な範囲
壁の撤去や間仕切りの設置、床材や天井材の変更など、どこまで改装できるのかを確認しましょう。物件によっては、構造上の理由や建物の管理規約によって、大幅な改装が制限される場合があります。
●工事時間帯
工事可能な時間帯や曜日が制限されている場合があります。特に、夜間工事や休日工事ができない場合は、工期が長期化する可能性があります。
●騒音・振動規制
工事中の騒音や振動に関する規制がある場合があります。近隣テナントへの配慮が必要となるため、事前に確認しておきましょう。
●搬入・搬出ルール
家具や什器、工事資材などの搬入・搬出に関するルールを確認しましょう。エレベーターの利用制限や搬入経路の指定などがある場合があります。
●原状回復義務
退去時の原状回復義務の範囲を確認しましょう。どこまで原状回復する必要があるのかによって、退去時の費用が大きく変わる場合があります。
これらの要素を事前に確認することで、内装工事に関するトラブルを回避し、スムーズなオフィス移転を実現できます。不動産業者や内装業者に相談しながら、自社の希望するオフィスデザインが実現可能な物件を選びましょう。